みなさま、ここ最近猛暑が続いたかと思えば、突然夕立が嵐のように降って来たりと天候が大きく異なり非常に困ったものですよね。
そんな状況下でも家をしっかり守ってくれるのは屋根であり、その屋根が家の室内環境に対し大きな役割を果たしています。

皆様ががよく知る「屋根」という言葉は、むかしの家づくりに由来しており、「屋」は住居や住処を指しています。「根」は、一説によると壁を設けない昔のつくりが屋根が壁の役割を担っており、地面まで屋根で覆われていた為、「根」という漢字が使われたようです。
今回は、現在の日本の住宅には欠かすことの出来ない「屋根」についてお話いたします。
【目次】
1)屋根の歴史
2)屋根の種類
 (1)スレート
 ①安価
 ②軽量
 ③カラーが豊富
 (2)陶器瓦
 ①カラーが豊富
 ②耐火・耐水、防音性が高い
 ③夏は涼しく、冬暖かい
 ④長持ち
 ⑤重い
 ⑥費用が高い
 ⑦落下リスクもある為注意が必要
 (3)セメント瓦(コンクリート瓦)
 ①耐火性がある
 ②形状や色が豊富
 ③衝撃に弱い
 ④塗膜剥がれや色褪せし易すい
 (4)ガルバリウム鋼板
 ①防蝕作用、防水性、耐震性が高い
 ②コスパが高い
 ③加工が容易
 ④断熱性、遮音性が低い
 (5)ジンカリウム鋼板
 ①塗装不要
 ②塩害に強い
 ③耐熱性、遮音性、断熱性、防音性に優れている
 ④軽量
 ⑤耐震性に優れている
 (6)トタン
 ①初期費用が低くすむ
 ②施工期間短い
 ③各性能値は低い
 ④錆、色褪せ、チョーキング、塗膜の剥離・膨張リスクが高い
 (7)アスファルトシングル
 ①施工費が高い
 ②耐久性に優れている
 ③メンテナンスサイクルが長め
 ④防水性・防音性に優れている
 (8)銅板
 ①耐久性・耐震性が高い
 ②局面にも利用し易い
 ③衝撃にも強い
 ④凹み、傷に弱い
 (9)ステンレス
 ①軽量
 ②サビに強い
 ③ガルバリウム鋼板より耐久性に優れている
 ④施工単価が高い
 ⑤断熱性と防音性は低い
 ⑥紫外線や経年劣化によって色褪せがあるので要注意
 (10)天然スレート(石)
 ①長持ち
 ②フリーメンテナンス
 ③風合いが良い
 ④価格が高い
 ⑤相対的に重い
 ⑥粘板岩である石内部に錆成分が多いと、石が層になって剥がれてくる恐れがある
 【屋根の種類のまとめ】
3)屋根の形状
 (1)切妻屋根
 (2)寄棟屋根
 (3)片流れ屋根
 (4)方形屋根
 (5)入母屋屋根
 (6)招き屋根
 (7)はかま腰屋根
 (8)陸屋根
 【屋根形状のまとめ】
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1)屋根の歴史

江戸時代の家は、木造住宅の屋根が燃えやすい萱葺き屋根であった為、大火災が頻発しました。
 江戸の町はその火災で1件も残らず燃えてしまい、家だけではなく死者も10万人以上も出ました。
 その火事から家を守る為、板葺き屋根にするようにお触れが出されました。
そんな中、江戸の町人が、誰よりもかっこいい屋根を葺こうと日本で瓦をはじめて採用しましたが、瓦を屋根に葺くための費用や重量の影響を受け、道路側のみ葺いたため半瓦という形状になったようですね。
その当時は封建時代のため、身分不相応との事でお咎めを受け、上流階級の者以外は瓦を採用することができませんでした。
その100年後に火事の未然防止を目的に屋根の不燃化を町奉行は推奨し、変化していき火事も少なくなっていったようです。
世界の住宅でも、上記の理由や長持ちするメリットから由緒ある寺院や仏閣でも不燃材料を使った歴史的建造物が多数残っています。今でも、ヨーロッパ周辺国では屋根に石を葺いている世界遺産の街もあります。
今の日本の屋根の種類も、時代や建物の違いで使われているものが異なります。
次項では、その屋根の種類についてご紹介いたします。
2)屋根の種類
(1)スレート
セメントを薄板状にして成形され、日本の新築で最も使用されており、特徴は下記の通りです。
①安価
 ②軽量
 ③カラーが豊富
非常に軽量のため、住宅倒壊リスク低い反面、メンテ量多く凍害弱い傾向があります。
 素材の耐用年数は25~30年ですが、メンテナンスには10~15年で再塗装が必要となります。
 立地条件や気象状況に応じて劣化スピードが異なる為、5年点検を行う事をお勧め致します。
 新築時の費用は4,000円/㎡位でとても安いです。
(2)陶器瓦
粘土瓦に釉薬を付けて焼成したもので、日本の伝統的な瓦(本瓦)です。
 その分高額ですが、特徴は下記の通りです。
①カラーが豊富
 ②耐火・耐水、防音性が高い
 ③夏は涼しく、冬暖かい
 ④長持ち
 ⑤重い
 ⑥費用が高い
 ⑦落下リスクもある為注意が必要
耐用年数は、50~60年で非常に長いですが、定期点検(漆喰、下葺材)は必要です。
 新築時の費用は、@7,000~12,000円/㎡が目安です。
(3)セメント瓦(コンクリート瓦)
セメントと川砂を混ぜて成形したもので、特徴は下記の通りです。
①耐火性がある
 ②形状や色が豊富
 ③衝撃に弱い
 ④塗膜剥がれや色褪せし易すい
上記の特徴がありますが、今現在生産が終わっているようです。
 耐用年数は、30~40年となりますが、10年で塗替えが必要です。
 新築時の価格は、@6,000~8,000円/㎡となります。
(4)ガルバリウム鋼板
アルミ:55%、亜鉛:43.4%、シリコン1.6%の成分割合となり、表面メッキを加工した鋼板で出来ています。
 金属屋根でシェアNO.1で、特徴は下記の通りです。
①防蝕作用、防水性、耐震性が高い
 ②コスパが高い
 ③加工が容易
 ④断熱性、遮音性が低い
というような特徴を持っています。施工業者も少ない為、施工費が高く、メンテナンスも注意が必要です。
 耐用年数は短く、25~30年となり、1年に1度の水洗いや5年に1度の点検、10年毎に再塗装が必要不可欠なので、ずぼらな方はお勧めしません。
 新築時の費用は、@6,000~9,000円/㎡位です。
(5)ジンカリウム鋼板
ガルバ鋼板に石粒を吹き付けコーティングしたもので、アルミニウム(55%)・溶融亜鉛(43.4〜43.5%)・シリコン(1.5〜1.6%)で構成された素材です。ガラス質に変化するため、下記特徴があります。
①塗装不要
 ②塩害に強い
 ③耐熱性、遮音性、断熱性、防音性に優れている
 ④軽量
 ⑤耐震性に優れている
輸入ものが多いためその分価格高く、耐用年数は、30~50年となり、メンテナンスフリーなのが嬉しい。
 価格は、@8,500~15,000円/㎡位です。
(6)トタン
最近の住宅ではほとんど見かけなくなったが、鉄板を亜鉛メッキでコーティングしたもので、材料、施工費共に安く、軽量のため、むかしは良く使われていました。
①初期費用が低くすむ
 ②施工期間短い
 ③各性能値は低い
 ④錆、色褪せ、チョーキング、塗膜の剥離・膨張リスクが高い
耐用年数は、10~20年で、5年ごとに再塗装が必要。
 価格は、@4,500円~/㎡とかなり安い。
(7)アスファルトシングル
グラスファイバーにアスファルトを塗装し、表面に石粒を吹き付けシート状に成形したものです。
 北米やカナダでは80%以上のシェアを持つが、日本での普及率は低いです。
①施工費が高い
 ②耐久性に優れている
 ③メンテナンスサイクルが長め
 ④防水性・防音性に優れている
耐用年数は、20~30年で、10~15年で再塗装が必要。
 価格はピンキリで@3,500~16,000円/㎡位です。
(8)銅板
素材は銅。古来、神社仏閣で多く利用され、趣のある純和風住宅向きである。
 緑青が生じて下記特徴を持ちます。
①耐久性・耐震性が高い
 ②局面にも利用し易い
 ③衝撃にも強い
 ④凹み、傷に弱い
耐用年数は、60年以上と非常に長く、しかもメンテナンスフリーという特徴を持つ。
 価格は、@18,000~20,000円/㎡と高い。
(9)ステンレス
クロムやニッケルを含んだ合金で、下記特徴を持ちます。
①軽量
 ②サビに強い
 ③ガルバリウム鋼板より耐久性に優れている
 ④施工単価が高い
 ⑤断熱性と防音性は低い
 ⑥紫外線や経年劣化によって色褪せがあるので要注意
というメリット、デメリットがあります。
 耐用年数は、50年と長いが、10~15年毎に再塗装が必要。
 価格は、@10,000~14,000円 / ㎡位です。
(10)天然スレート(石)
素材は、天然石で粘板岩。地殻変動による変成作用(高温・高圧)によってできた岩石で、下記特徴を持ちます。
①長持ち
 ②フリーメンテナンス
 ③風合いが良い
 ④価格が高い
 ⑤相対的に重い
 ⑥粘板岩である石内部に錆成分が多いと、石が層になって剥がれてくる恐れがある
耐用年数はかなり長く、メンテナンスもフリー。
 施工も引掛け工法だと施工も交換も簡単なので、コストパフォーマンスは最も高い。
<参考サイト>https://www.mutenkahouse.co.jp/products/stone
【屋根の種類のまとめ】

それぞれの屋根の種類の素材、特徴、その屋根のメリットやデメリット、耐用年数、メンテナンス時期、価格を一覧表にしてみました。
 皆様はどの屋根を使いますか?
3)屋根の形状
屋根の種類もたくさんありますが、その形状も地域特性や好み、費用も異なるのでそれぞれの特徴を理解して採用したいものです。
(1)切妻屋根

三角屋根とも呼ばれる最もベーシックな形状で、2方向に傾斜している屋根。
 雨水が流されやすく、和風・洋風どちらにも対応し、換気がしやすいメリットがあり、妻側は、雨・風に弱く、太陽の光にさらされやすく劣化しやすいデメリットがあります。
(2)寄棟屋根

 4方向に傾斜しているため、風雨や紫外線のダメージを分散できる特徴があり、バランスの取れた形状、景観が良い、方向を選ばない、耐風性・耐久性高いというメリットがあります。
 逆に棟が多いので、雨漏りのリスク高い、建築時のコストがやや高いです。
(3)片流れ屋根

 棟から1方向に傾斜した近年よく見られるデザイン特徴の屋根。
 屋根勾配の高い部分の室内空間が増えるが、外壁の劣化リスクがある。
(4)方形屋根

家の中心を頂点に、4方向に傾斜している屋根で、4面で雨風を分散するため耐風性高い特徴がある。
 棟が多いので雨漏りのリスク高いのがデメリット。
(5)入母屋屋根

昨今の屋根には人気が無く、瓦屋根に用いられる和風住宅に適した形状。
 屋根裏の通気性が高く、断熱性に優れているが、価格は高い。
(6)招き屋根

2面の屋根が段違いで設置されています。
 風雨を分散させるため耐風性に優れ、住宅の通気性や断熱性を確保しやすい形状となっています。
(7)はかま腰屋根

切妻屋根の棟を平面にカットしたような屋根形状で、道路斜線制限や高さ制限に対応しやすい。
 しかしながら、棟が増えるので雨漏りのリスク高い。
(8)陸屋根

傾斜のない平面状の屋根で、土地面積の少ない住宅の屋上の有効活用として都心部で良く見かけます。
 屋根スペースを有効に使えるが、風雨や紫外線を分散できないため、メンテナンスの頻度は高くなり、比例して費用も高くなります。
【屋根形状のまとめ】

このように屋根の種類や形状がたくさんありますが、屋根は雨や日射を防ぎ、もっとも重要な構造の一つです。屋根によって機能面や家の印象も大きく変わりますので、気象や地域条件、生活スタイルや好みにあった屋根を選ぶことが家づくりでは重要なポイントです。
この記事を書いた人
 株式会社ビリーフハウス 花島




